それは刀根山病院から始まった



大阪の豊中市にある刀根山病院には、筋ジストロフィー専門の外来と病棟がある。ボクは十数年前からそこで年に2回の定期検診を受けており、4年前に呼吸器を使用するようになってからは毎年1週間ほど呼吸器のオーバーホールを兼ねた経過観察入院でもお世話になっている。

今週が今年最初の定期検診の予定日なのだが、考えてみるとサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)への住み替えはまさに去年の3月の検診の時に先生にそのことを相談したのが始まりだった。

刀根山病院には、在宅患者と行政サービス機関や在宅サービス提供事業者との情報交換を円滑に行うための地域ネットワークセンター(以前は地域医療連携室といった名前だったように思う)がある。

その後の経過観察入院の際に地域ネットワークセンターの医療ソーシャルワーカーさんとの面談の機会を設けていただいた。そこで刀根山病院の近くの施設であれば、センターから直接入所を仲介することも可能だが、自宅近くの施設への入所を希望するのならば、センターとしても伝はないので、介護施設紹介センターを利用するのがよいのではないかとアドバイスを受けた。

介護施設紹介センターというのは老人ホームや障害者施設などの施設選びから入所までを仲介するエージェントで、利用者の希望に沿った施設の紹介から見学の同行といったサービスに加えて、事業所によっては入所後の様々な相談にのってもらえるところもある。

その時には自分のような高齢の障害者を受け入れてくれる介護施設についての知識がほとんどなかったこともあり、紹介センターの利用をお願いしたところ、ソーシャルワーカーさんから全国的に展開している事業者と自宅のある地域に強みを持つ事業者の2社を紹介していただいた。

それまで漠然と考えていた介護施設への住み替えがいよいよ実現に向かって踏み出し、今日に至るまでの約一年に渡るサ高住選びが始まった瞬間である。




筋ジストロフィーについて


まずは自己紹介を兼ねて筋ジストロフィー(以下、筋ジス)について簡単に説明します。筋ジスは徐々に筋肉が衰える遺伝性疾患と定義される、希少疾病の一つです。しかし、一口に筋ジスと言っても、実はいくつかの型があり、それぞれ原因も症状も違っていて、全く別の病気と言っても過言ではありません。

最も患者数が多く、症状も重篤なのがデュセンヌ型筋ジストロフィー(DMD)です。性染色体であるX染色体上にあるジストロフィン遺伝子の変異が原因で、患者は男性に限られるのが特徴です。一般的には筋ジスといえばこのDMDのイメージが強いのではないでしょうか。かつてはDMD患者の多くは若くして亡くなられていたのですが、最近では、早期に人工呼吸器を使用することによる予後の改善が周知されるようになったことから、50歳を超えて生存される方も増えています。

ボクのは顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と呼ばれるもので、筋ジスの中では比較的進行が緩やかであるとされています。第4番染色体上の遺伝子の異常発現が原因と考えられ、男女ともに発症します。また、進行度合いに個人差が大きいのもこの型の特徴で、10歳までに車椅子が必要となる場合もあれば、少し腕が挙げにくいかなという程度で自分が筋ジス患者であることすら気づかずにいる人もいるようです。

FSHDで車椅子が必要になるのは全体の20%ほどという調査結果もあるので、30歳あたりで車椅子を使用するようになったボクの場合はFSHDの中ではやや症状が重い方と言えるでしょう。

筋ジスの全てのタイプに共通して言えることは根本的な治療法がまだ確立していないこと。ゲノム編集やiPS細胞などの最新の技術を応用した治療法の研究が進められていますが、実用はまだまだ先の話になりそうです。

筋ジストロフィーについてもっと詳しく知りたいとお考えの方に「一般社団法人 筋ジストロフィー協会(JMDA)」のホームページを紹介します。ここでは、筋ジスの各タイプの概要、筋ジス専門医療機関、筋ジス患者本人やその家族に向けた情報など様々なコンテンツが提供されています。また、同サイトからJMDAの活動を支援するための寄付も受け付けておりますのでよろしくお願いいたします。




サ高住暮らし始めます



筋ジストロフィーという難病とともに生きてきてもうすぐ60年、いわゆる還暦というやつである。還暦には「生まれ変わり」や「新しい生活の始まり」といった意味があるらしい。

だからというわけではないが、還暦を機に新たな生活を始めることになった。具体的には、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)への住替えである。とは言っても、今はまだ入居待ちの状態で、この記事も自宅で書いている。

サ高住への住替えを決めてからネットで様々な情報を探した。ところが、サ高住の経営やスタッフの側からの情報は溢れているのに対して、そこに入居している利用者側からの情報は驚くほど少ないことがわかった。

そこで、このブログでは、サ高住への住替えを決めた訳、入居するサ高住を決めるまでの経緯、そして入居後はサ高住での生活の様子などを書き綴っていこうと思っている。障害のあるなしにかかわらず、将来的にサ高住を含むホームへの入居を考えている方の参考になれば幸いである。




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