取り寄せたパンフレットに書かれた内容を比較し、その中から希望する条件に合うホームを選んだところで、いよいよ見学の申し込みということになります。ここでは見学の手順や注意すべきことについて説明します。
1. 希望条件の優先順位の決定・質問事項の確認
見学に行く前にしておくべきことがあります。それはホームを選ぶ上で希望する条件の優先順位を決めておくことです。立地なのか費用なのか、それとも設備やサービスなのか、100%希望通りのホームに出会えるなどということはまずありません。どの条件を優先し、どこなら妥協できるのかを 決めておかないと見学に行ってもホームの説明を聞くだけで終わってしまい、いつまでも入居するホームが決まらないということになってしまいます。
もう一つは絶対に譲れない条件をはっきりさせておくこと。ボクの場合は、自宅で使っていた超低床タイプの電動ベッドを持ち込めることと夜間に人工呼吸器を使用できることの二つが絶対条件で、見学の時に必ず確認するようにしていました。大切なことは聞き忘れることのないようにメモしておくのに加えて、見学に行く前に同行者全員で希望条件を共有しておくのがよいでしょう。
2. 見学予約の仕方
次は見学の日時を予約することになります。施設長あるいは担当者によるホームの説明と案内、そして個別の質問、合わせておおよそ2時間程度、比較的スタッフに余裕のある昼食後あたりがよいと思います。昼食時間に合わせて見学するのがよいと書かれたサイトもありますが、体験入居を予定しているのであれば、そのときに分かることなのでそんな忙しい時間にわざわざ行くことはありません。
予約はパンフレットやホームページに書かれている電話番号から行います。時間と同行者の人数、車で行く場合は駐車場が使用できるかどうかも確認しておきましょう。ホームによっては車で送迎してもらえる場合もあります。紹介センターを利用している場合は、相談員が見学の日時の調整など面倒な段取りも全てやってくれます。
3. 見学に誰と行くか
今入居しているホームにもよく入居希望者の家族の方が来られています。中には親族一同かと思うほど多人数で来られている場合もありますが、あまり人数が多いと肝心の聞きたいことが十分に聞くことができないのではないかと他人事ながら心配になります。 ボクの場合は、同居している姉と紹介センターの相談員の方、それに都合がつく場合にはケアマネさんにも同行してもらいました。同じメンバーでいくつかのホームの見学を経るうちに、基本的な希望条件をボクと姉で確認した後、ホームのシステムや提供されるサービスなどの専門的なことは相談員の方とケアマネさんに任せるといったように自然と役割分担ができ、短時間でも内容のある見学ができるようになったと思います。
4. 見るべきは廊下の壁
見学の際には居住スペースや食堂、浴室などの設備を案内してもらえるでしょう。元々社員寮であった建物をリノベーションしてホームに作り替えた場合などでは部屋にミニキッチンやシャワースペースまであるところもありますが、法律で個室の広さが決められていることもあり、部屋のつくりはどこも似たり寄ったりです。しかし、この時、注目してもらいたいのは部屋ではなく、エレベーターホールや廊下の壁です。そこにはその週の食事の献立表であったり、行事やレクリエーションの日程の書き込まれたカレンダー、誕生日会で撮影された写真、入居者が描いた絵や習字の作品など様々なものが貼られていることが多いです。それらを見ることで入居前にホームの日常の雰囲気を感じとることができます。
入居後にレクリエーションやサークル活動で他の入居者との触れ合いを楽しみにしているのであれば、壁に貼られた展示物が大いに参考になるのではないかと思います。
5. ホームの周辺環境の確認
見学のときに確認するのはホームの設備やサービスだけではありません。ホームの周囲の環境を確かめておくことも大切です。入居してから分ったのですが、日用品やおやつに食べるお菓子が買えるようなスーパーやコンビニが近くにあるというのはかなり重要なポイントです。
また、家族が面会に来るときに車を止められる場所が近くにあるかどうかも確認しておいた方がよいでしょう。ホームの駐車場は時間帯によってはデイサービスの送迎の車の駐車スペースとして使われることが多いので、駐車場があるからといっていつでも使える訳ではありません。
これは特殊な例ですが、ここ数年毎年のように水害に見舞われた地域で老人ホームの入居者が避難することができず、ホームに取り残され孤立してしまうといったニュースを目にするようになりました。これからは自治体の発行するハザードマップなどでホームのある場所の安全性を検討する必要があるかもしれません。