体験入居、偶然の再会
年が明け、いよいよ二泊三日の体験入居となった。そこでまたサプライズが。最初に見学に行った施設、つまり断られてしまったが第一希望だった施設での体験入居でお世話になった方がスタッフとして働いていたのだ。奇遇というか、転校した学校で先に転校した元同級生と偶然再会したような感じとでもいえばいいのか、おかげで初めての施設での体験入居の緊張感も一気にほぐれた。
体験入居に使わせてもらったモデルルームは西向きの大きな掃き出し窓があって明るい。ベッドの他には、テレビと冷蔵庫、衣装タンスが備わっていて、シンプルだけれども快適に過ごせそうだ。
トイレは入り口の横、洗面台の横にあり、車いすでも使えるようにカーテンで仕切られている。便座の高さも低めでボクにとってちょうどいい高さだった。公共の施設の多目的トイレでは、足腰の弱った高齢者にとって立ち上がりやすいように便座が高めになっているところが多い。しかし、僕の場合は逆に低い方が姿勢が安定するので使いやすいのだ。トイレに限らず、体験入居では、洗面台の高さや食事のテーブルの高さなど毎日何度も使うところの使い勝手の良し悪しを確認することはとても大切なことだといえる。
この施設の定員は56人となっているが、体験入居の時には入居率は6割ぐらいのように思われた。そのせいか食事の時にも広い食堂が混雑するようなこともなく、ゆったりと食事をとることができるし、またその食事が美味しいときている。この施設を運営している会社の社長は有名料亭で修行した板前さんだったことがあり、食事には力を入れているのだそうだ。
特にスタッフの方が皆さん明るく、介助に手のかかるボクにもやさしく接してもらえて、アットホームな雰囲気も感じることができた。入居者はほぼ全員が高齢者で入居者同士でのコミュニケーションは難しいように思えたが、それ以外は何もかもが希望の条件を満たしていた。
最初の例もあったし、体験入居を終えるとすぐに紹介センターの相談員さんを通して入居申請を提出した。幸い、施設長からはすんなりと入居についてはOKをもらえた。しかし、入居の時期はもう少し待って欲しいとのこと。部屋は空いているので、スタッフの人数が揃うまでということだったのかもしれない。介護業界はどこも人手不足なのでこれは仕方がない。
ようやく入居先が決まってひと安心。後は入居の日を待つだけと思っていたら、まだ一仕事残っていた。それについてはまた次回に。
一周回って灯台下暗し
第一希望の施設に振られてしまったことで、また新たな施設探しを始めることになりました。こんな時に頼りになるのはやはり施設選びのプロである紹介センターの相談員さんです。これまでも多くの施設を紹介してもらいましたが、もう一度障害者の受け入れが可能な施設を探してもらうようにお願いしました。
その結果、紹介してくれたのが同じグループに属する、市内と隣市にある二つの施設。隣市にある施設は自宅から車で20分ほど、JRの駅からも少し離れた閑静な住宅街に建っている。市内の方は、JRと私鉄の両方の駅近くの便利なところにあり、建物も築二年ほどで新しい。しかし、その分、家賃とサービス利用料が少し高くなっている。
どちらを選ぶのかで少し迷ったが、まずは市内の施設の見学に行かせてもらった。自宅から2つ隣の駅前にあり、車なら5分ほど、自転車でも通える距離にある。実際に訪れると予想以上にきれいで、最初から老人ホームとして設計されていることもあり通路も広く、食堂や浴室などもよく考えて配置されていた。
館内を一通り見せてもらった。担当のマネージャーさんはいかにこの建物の作りがしっかりしているかについて熱く語っておられた。後で聞いたところによれば、マネージャーさんは某有名ハウスメーカー出身で、セカンドキャリアとして介護業界に来られたんだとか。なるほど。
もうひとつ、見学には紹介センターの相談員さんに加えて、ケアマネージャーさんにも同行してもらっていた。そうするとなんと、ここの施設長は以前、ケアマネさんの事業所の系列の特養で働いていたことがあり、顔見知りだとのこと。その特養にはボク自身もショートステイでお世話になっていて、聞いてみると利用しているフロアのリーダーをはじめ何人かのスタッフとは一緒に働いたこともあるらしい。なんという偶然。こんなつながりがあったとは、これも縁というものだろうか。
早速、体験入居を申し込んだところ、モデルルームに泊めてもらえるとのこと。体験入居は原則二泊三日となっているものの、希望すればそれ以上、三十泊三十一日でもOKで、実際にそれほど長く滞在した方もおられたのだそうだ。
体験入居は年が明けてからということに決まった。それについてはまた次回に。
振出しに戻ったサ高住選び
刀根山病院で施設入所の希望を伝え、介護施設照会センターに仲介をお願いしてから約8ヶ月、いくつかの施設の見学・体験入居を経て、ようやく希望する施設も決まり、そこが満室であった場合でも空きが出るまでのつなぎ(レスパイト)入居できる施設も見つかった。これで施設選びも終わりかなと思っていた。
そして、第一希望の施設に空室状況を問い合わせるために電話をかけた。応対してくれたのは施設の見学や体験入居でお世話になった施設長さんだったが、ちょっと様子が変。なぜか歯切れが悪い。 詳しく聞いてみると、そこは隣市でいくつかの障害者を運営しているグループの一つなのだが、グループ全体の方針が入居者について市内在住の若い障害者を優先するということに変わったので、還暦を目前にしたボクを新たに受け入れるのは難しいということのようだ。
それでも施設長さんは来週にも入居者の判定会議があるので、そこで入居できるように頑張ってみると言っていただけたのですが、やはり特例を認めることは無理ということでした。体験入居の時に合わせて入居の申込書を出していればなんとかなったかもしれないけれども、今となっては後の祭り。この時点で第一希望だった施設への入居は叶わぬ夢となりました。
こうなった以上、それまでレスパイト入居先と考えていた施設に入居するのか、それともさらに施設探しを続けるのかを決めなくてはいけません、レスパイト入居にと考えていた施設も悪くはなかったのですが、入居を急いでいたわけでもなかったので、紹介センターの相談員の方にもう一度障害者が入居可能な施設を探していただくことになりました。
続きはまた次回に。
第三のタイプ、ユニットケア型施設
これまでは自宅から近い小規模な施設を選んで見学・体験入居を行なっていました。しかし、もっといろいろな施設を見た上で入居施設を決めたいと思い、自宅から少し遠い施設や大規模な施設も候補に入れたことで選択肢に加わった施設は大きく増えました。
ところが、障害者総合支援法に基づいてボクのような重度の障害者を受け入れている施設は大規模な施設と言えどもそれほど多くないのが現状です。たとえホームページに受け入れ可能と記載されていところでも、問い合わせてみると、過去には障害者も受け入れていたが、現在は体制が整っていないので入居は断っているといった場合がありました。
そのような中、紹介センターからいただいたパンフレットの中にはなかったのですが、ネットの情報をもとに障害者を受け入れてもらえそうな施設をいくつかピックアップし、紹介センターの相談員さんに問い合わせてみました。
するとそのうちの一つは障害者の受け入れが可能で、提携もしているということだったので見学の仲介をお願いしました。 そこは自宅から車で20分ほどと少し離れたところにあるサービス付き高齢者住宅(サ高住)で、定員70名と比較的大きな施設でした。設備や周辺環境などの条件も悪くなかったので、その場で体験入居を申し込み、数週間後には体験入居となりました。
実際に体験入居して分かったことはそこがユニットケアと呼ばれる介護システムを採用していること。ユニットケアでは10人程度の少人数のグループを単位として専任のスタッフがケアにあたるので大人数の施設でも小規模な施設のようなアットホームな環境が感じられるというメリットがあります。 また、この施設は食事はフロアごとのユニットでいただくのですが、レクリエーションなどはユニットを超えて全入居者の中から希望者が集まって行うといったように入居者間のコミュニケーションにも配慮がなされていました。
自宅から少し離れていて、車でしか通えないという点は気になりましたが、体験入居でもスタッフの方にはよくしていただいたことから、ここもいいかなという気になりました。
しかし、最初に体験入居に行った施設の印象があまりにも強かったので、そこに空きが出るまでのいわゆるレスパイト入居という形で利用させてもらおうかな、いろいろ見てきたけれども施設選びもこれで打ち止めかな、などと都合のいいことを考えていました。 ところが、世の中そんなにはうまくいかないもので想定外の事態が起こってしまいました。
それについてはまた次の記事で…
大規模施設か小規模施設か、そのメリットとデメリット
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)には大きく分けてビル一棟全体を使い、入居者が50人以上となる大規模施設と2階建程度の建物あるいはビルの一部分のみを利用した、30人以下の入居者で運営される小規模施設の2つのタイプがあります。
これまでに見学に行った4つの施設はいずれも小規模タイプでした。その理由として、サ高住はいちおう60歳以上を対象にはしているものの、基本的には老人ホームなのでその入居者はおおむね80歳以上で60歳になったばかりのボクとは親子ほど歳の離れた人が多い。つまり、そういった方々とは話も合わず、施設内でボッチになる可能性が高いだろう、そして、それが入居者が多く、全員が食堂に集まって一緒に食事をとるような施設だとさらに孤独感が増すのではないかという思い込みがあり、大規模な施設は最初から選択肢から外してました。
実際に、最初に体験入居を経験した小規模な施設では、アットホームな雰囲気で、スタッフの方だけでなく、他の入居者の方々とも良いコミュニケーションが取れ、孤独感を感じるようなことは全くありませんでした。もちろん小規模施設の全てがアットホームであるとは限らないでしょう。たまたま体験入居に行った施設がそうであっただけなのかもしれません。また、アットホームな雰囲気というだけで入居する施設を選ぶわけにはいきません。小規模な施設には小規模であるがゆえのデメリットもあります。
小規模な施設のデメリットとしては大規模な施設に比べて設備面で劣っていることが挙げられます。具体的には、大規模な施設であれば施設内に厨房があって出来立ての美味しい食事が提供されるだとか、専用の車椅子に座ったまま、あるいはストレッチャーに乗ったまま入浴できる特殊浴槽があるといるといったような設備が整っていることが多いのですが、小規模な施設でこういった設備を揃えているところはそう多くはありません。
その他にも、大規模な施設の中には様々な趣味のサークルがあったり、季節ごとの行事が催されていたりと、入居者が孤立しないような取り組みが行われているところもあるようです。
これまで自宅から近い、小規模な施設ばかりを選んでいたのですが、紹介センターの相談員の方からいただいたパンフレットを見比べているうちに設備の整った大規模な施設も良いのかもと少し考えも変わってきました。また、入居してもしなくても様々なタイプのサ高住を見学できる機会はもうないだろうから、今のうちにできるだけ多くの施設を見ておきたいという思いもあり、少し候補の範囲を広げて、大規模な施設も見学に行くことにしました。
特色ある住宅型老人ホーム
最初の施設での見学・体験入居の後、紹介センターの相談員さんにお願いして、だいたい1月に1カ所のペースで新しい施設を見学して回ることにした。
二番目に訪れた施設はサ高住ではなく、住宅型有料老人ホーム。しかし、職員の方の話によれば、介護認定を受けた高齢者だけでなく、自立を目指す障害者や子育て世代のシングルマザーも入居可能な福祉ハウスというユニークな試みに取り組んでいるとのこと。最初に見学・体験入居した施設と同じような多世代共生型で、同じ建物内に放課後デイサービスも併設していた。
三番目に訪れたのも住宅型老人ホーム。ここは介護医療体制が充実していて、24時間看護師が常駐し、筋ジストロフィーやALSといった疾患にも対応が可能で、そういった疾患を持つ患者は優先的に入居できるとの説明を受けた。また、大型スーパーや商店街が近くにあり買い物にも便利なことに加えて、高台にあるので居室からの眺めも良かった。
四番目に見学に訪れたのは自宅からほど近い有料老人ホーム。近いとはいっても市外になり、比較的小規模な施設なので紹介センターからの仲介がなければ候補にも上がらなかっただろう。ここは小規模ながらリハビリと食事が美味しいことをセールスポイントにしていて、館内にリラクゼーションルームを備え、入居者は無料でマッサージを受けることができるということだった。
以上3つの施設はどこも魅力的な特長を持っていて、なおかつ自宅からも近く、比較的小規模であるという点でも希望に沿った施設だった。しかし、残念ながらどの施設も満室で部屋を用意できない、あるいは元々体験入居は行なっていないという理由で体験入居は叶わなかった。
その施設の雰囲気や介護サービスなどは実際にそこで経験しなければ分からないところがあるので、ボクにとっては体験入居は入居する施設を決める上で絶対に欠かせない条件だった。そのため、残念ながらこれらの施設は候補から外すことにして、次からはこれまで選んでこなかった、自宅から少し離れたところにある施設や入居者数の多い大規模な施設も候補に挙げて見学に行くことにした。
サ高住 最初の体験入居
介護施設紹介センターの相談員さんが選んでくれた施設の中から、自宅から一駅と近く、入居者数が20人余りの比較的小規模な施設を選んで見学・体験入居をすることになった。
見学は紹介センターの相談員さんに同行いただいてまあ普通に終了。しかし、体験入居は良い意味で衝撃的だった。
そこは元は老人ホームだったのを地元で障害者福祉に力を入れているグループが引き継ぎ、サ高住として障害者を受け入れるようになったところ。そのために入居者は老人ホームだった頃からいる100歳になる超高齢者から最近入居した二十歳を少し超えたばかりの若い障害者までバラエティに富んでいた。
とにかく施設の雰囲気が明るくて、体験入居の間、スタッフだけでなく入居者の人たちからも本当にフレンドリーに接してもらえた。親子ほど年の離れた若い入居者も積極的に話しかけてくれたし、夕食時には同世代の入居者の人たちと昭和トークで盛り上がった。
これまでショートステイで特養を利用させてもらっていたが、そこでは食事の時に食堂で顔を合わせるだけで食事が終わるとそれぞれ自室に戻るといったように利用者同士の会話はほとんどなかった。おそらくどこのサ高住でも同じようなものだろうと思っていたので、こんな施設もあるのかと正直驚いた。
さらに、アットホームな雰囲気だけでなく、とても開放的であったのも印象的だった。午前中から入居者が通っている作業所の送迎の人やリハビリの先生、ガイドヘルパーさんなど外部の人の出入りも多い。特養は認知症の人も多いために閉鎖的になってしまうのはある程度仕方ないことではあるが、この体験入居は障害者施設や老人ホームは閉鎖的なものという思い込みを変えるきっかけとなった。
二泊三日の体験入居を終えて、正直このままこの施設に決定してしまおうかと思ったほどだった。しかし、ここ以外にも興味のある施設もあったし、元々一年ほどかけて出来るだけ多くの施設を見た上で決めるというつもりだったので、とりあえずこの施設は第一希望ということで保留にして、次の施設の見学に行くことにした。
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